[メイン3] : カツカツ、規則正しい足音が鳴り響く

[メイン3] : 無骨な装備に身を包み

[メイン3] : 今日一杯のはした金を手にし

[メイン3] : 泥水を啜って戦場を這いまわる

[メイン3] 戦術射撃兵 : 明日の命を的にして

[メイン3] 戦術重装兵 : 肌の一片迄使い捨て

[メイン3] 対装甲兵 : 友を鉄の盾と呼び

[メイン3] ウォーゴースト : 戦場に魂の全てを囚われて

[メイン3] 傭兵部隊 : 亡霊の軍靴が、蹄のように足音を残す

[メイン3] 傭兵部隊 : 皆死ぬ、皆死ぬのだ

[メイン3] 傭兵部隊 : 金の為にでもなく、未来の為でもなく

[メイン3] 傭兵部隊 : 戦場に命を捨てにやって来た

[メイン3] 傭兵部隊 : 金で戦いを買った男たちは、戦場にやって来た

[メイン3] 傭兵部隊 : 今日もまた、戦争だ

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3]   : 敗戦だ!

[メイン3]   : ああ!また敗戦だ!

[メイン3]   : 血が泥に染みる

[メイン3]   : 鉄が砕けて薬莢をばら撒く

[メイン3]   : 敗北の二文字を刻め、報酬を抱えて逃げまどえ!

[メイン3] 戦術射撃兵 : この戦場は地獄だな!

[メイン3] 戦術射撃兵 : 男は叫んだ、そして死んだ

[メイン3] 戦術重装兵 : 増援は期待できないな

[メイン3] 戦術重装兵 : 男は嘆いた、そして死んだ

[メイン3] 対装甲兵 : 弾薬はもうないのか!?

[メイン3] 対装甲兵 : 男は求めた、そして死んだ

[メイン3] ウォーゴースト : 次はどの戦場だ!

[メイン3] ウォーゴースト : 男は駆けた、そして死んだ

[メイン3] 傭兵部隊 : 死体に死体を積み上げろ、兵士たちは其処を駆ける

[メイン3] 傭兵部隊 : 軍靴の謳歌は止まらない

[メイン3] 傭兵部隊 : 此処は戦場

[メイン3] 傭兵部隊 : 亡霊たちの最終到着点

[メイン3] 傭兵部隊 : 戦いは、終わっていない──

[メイン3] :

[メイン3] :

[メイン3] 皐月夜見 :  

[メイン3] 皐月夜見 : 朝日が昇り、暖かな光で照らされる、無人の都市群。

[メイン3] 皐月夜見 : 青空が広がりかける空に、真っ黒の蝶の群れが、過る。

[メイン3] 皐月夜見 : そうして、信号だけが機能して、誰も渡らないスクランブル交差点へ集い。

[メイン3] 皐月夜見 : その中央に立つ、夜見のもとへ─────。

[メイン3] 皐月夜見 : 「…………偵察完了」

[メイン3] 皐月夜見 : ……この戦いで、私が

[メイン3] 皐月夜見 : 一番初めに

[メイン3] 皐月夜見 : "脅威"を抱いた相手─────。

[メイン3] 皐月夜見 : ……さやかさんと、デンジさんの勝利の妨げとなる、存在。

[メイン3] 皐月夜見 : 瞳の奥で、荒魂の禍々しい火が揺らめきながら。

[メイン3] 皐月夜見 : 「………ガリィ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : カラン ころん
まるで子供の玩具のような可笑しな音を立て、歯車仕掛けの人形が姿を表す

[メイン3] 皐月夜見 : その音に反応し、ゆっくりと振り返る。

[メイン3] 皐月夜見 : 広々としたスクランブル交差点を、贅沢にも2人の少女が貸し切り状態。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : まるで最初からそのばにいたように、光の中から戦場予定の交差点に歩み出る

[メイン3] 皐月夜見 : 「………探す手間が省けました」

[メイン3] 皐月夜見 : 抜刀。

[メイン3] 皐月夜見 : その刃先を、ガリィへ向け。

[メイン3] 皐月夜見 : 「折神家親衛隊、第三席」

[メイン3] 皐月夜見 : 「皐月夜見」

[メイン3] 皐月夜見 : 「─────推して参ります」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……名乗られたからには仕方ない」

[メイン3] 皐月夜見 : ……"覚悟"を、背負って。

[メイン3] 皐月夜見 : あの2人のために。
もっと、認められるために。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「こちら、チフォージュ・シャトーから参上しました」

[メイン3] 皐月夜見 : この刀は、例え人を殺す剣となってもいい。
私は、どれだけ汚れてもいい。

[メイン3] 皐月夜見 : 漆黒の蝶の群れが、夜見の周囲を羽ばたき

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「万象黙示録の礎となり、マスターの悲願を成就する為」

[メイン3] 皐月夜見 : 得体の知れない、大きな異形の化物として、顕現する。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「奇跡を殺し尽くす為」
「身を粉にして日々日々頑張るガリィちゃんです☆」

[メイン3] 皐月夜見 : 夜身を取り巻く空間全てが真っ黒に染まる、殺意の密度。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : あくまで人形は変わらない
相手が何を背負ったかは知らないが、相手との実力差が変動するわけでもないと知っている

[メイン3] 皐月夜見 : 「…………奇跡、ですか」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 強さとはどこまで行っても絶対値
相手が他者とのあり方を変革しようが、変えられるのは戦法程度

[メイン3] 皐月夜見 : 「奇跡は、ええ、そう簡単に起こるものではありませんからね」

[メイン3] 皐月夜見 : 「─────ですが、私は起こしてみせましょう」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……へぇ」

[メイン3] 皐月夜見 : 写シは、発動しない。
隔世へパスを繋げた場合、夜見の体内から湧き出る荒魂の群れに制御が掛かる。

[メイン3] 皐月夜見 : 地を蹴り出し、重量を持つ刀を握り。
ガリィへと一直線へ突撃する。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「早速かよっ!」
「その蝶々は飾りかぁ!?」
水分を凝結させ、手元に氷槍としてあつらえると思い切り振りかぶり

[メイン3] 皐月夜見 : 「飾りではありませんよ」

[メイン3] 皐月夜見 : 夜見の背後より、夜見を覆い尽くしてしまうほどの巨影が現れる。

[メイン3] 皐月夜見 : 漆黒の蝶の群れは、ガリィの両腕を捕捉するように纏わりつく。

[メイン3] 皐月夜見 : 一つ一つは小さな力なれど。

[メイン3] 皐月夜見 : 群となったそれは、人智を凌駕した、圧倒的"暴"を見せつける。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「チッ…蝶のくせにアリンコみたいにィ…!」

[メイン3] 皐月夜見 : その隙を見逃さぬように。

[メイン3] 皐月夜見 : 「御覚悟を」

[メイン3] 皐月夜見 : 牙突の姿勢。

[メイン3] 皐月夜見 : シュンッ。

[メイン3] 皐月夜見 : ガリィの心臓目掛け、刀を突き立てんとする。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 風を穿ち、迫る刀
ガリィの視界からは確かに相手の姿は消える

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……ならば

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 見えようが、見えないが
関係のない防ぎ方をすればいい

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 途端、二人の間を割くように現れる氷壁が強引に敵の突撃を妨害する

[メイン3] 皐月夜見 : 「…………」

[メイン3] 皐月夜見 : ……やはり、そう上手くはいきませんか。

[メイン3] 皐月夜見 : となれば……。

[メイン3] 皐月夜見 : 左手で素早く、アンプルを用意。

[メイン3] 皐月夜見 : それを、自身の首元の動脈へ刺し込む。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「アレは……」
透明の氷壁越しに様子を眺める

[メイン3] 皐月夜見 : ドクンッ。

[メイン3] 皐月夜見 : 「う、ぐァッ……!」

[メイン3] 皐月夜見 : 体内で、荒ぶる複数の魂。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「リンカー……」
「いいや、色が違う」

[メイン3] 皐月夜見 : そのアンプルは、"ノロ"と呼ばれる、異次元の生命体の濃縮体であり。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「お前、そこまでして……なんのつもりだ」
明らかに様子がおかしい、そもそも……薬物とは人体を歪める物でもある

[メイン3] 皐月夜見 : 人の身でありながら、夜見は────隔世の生命体の力を、無理矢理体へ注入。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : しかも、戦闘用の品となれば……
間違いなく身体に害を及ばすことは必定だ

[メイン3] 皐月夜見 : 指先が暴れ出しながらも。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 毛虫のように蠢く指

[メイン3] 皐月夜見 : 「フゥッ……フゥーッ……!……なんの、つもり……?」

[メイン3] 皐月夜見 : 「……当然ではないですか」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 全身を波立たせるその様は……

[メイン3] 皐月夜見 : 虚ろな瞳で、氷の壁越しに、ガリィを睨む。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……見覚えがある筈だ

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : それは人形の在り方

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 主人の為、何かの為に全てを捨てる

[メイン3] 皐月夜見 : 夜見の体を侵蝕し、体細胞を破壊し尽くしながらも。
確実に、桁外れの力が宿されていき─────。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ──しばし、共感を胸に抱き

[メイン3] 皐月夜見 : ピキィッ。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 憎悪と共に吐き捨てた

[メイン3] 皐月夜見 : 氷の壁に、亀裂が生じる。

[メイン3] 皐月夜見 :  

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「人間だろうが、なら捨てて何が得られる!」

[メイン3] 皐月夜見 : 「──────────勝つためですよッ………!!」

[メイン3] 皐月夜見 :  

[メイン3] 皐月夜見 : バリ、バリリ、バキィッ。と亀裂が広がり……

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……力づくか」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 後一歩で砕け散るであろう氷壁、拘束された腕

[メイン3] 皐月夜見 : 「はぁぁああああああッッッ………!!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……捨て身

[メイン3] 皐月夜見 : 脈動し、迸る夜見の熱き、真っ黒な血流。

[メイン3] 皐月夜見 : 「貴女を………ここで…………!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 蝶を凍結させ解くが、

[メイン3] 皐月夜見 : 「倒すッ………!!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : このスピードでは間に合わない

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 幻影は捉えられている以上効果をなさず、対象との差は文字通りの紙一重

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 氷壁は追加する余地がなく、再構成も不可能

[メイン3] 皐月夜見 : 氷の壁が砕け散り、力を溜め込んだ牙突が、ガリィの胸元へと
瞬速に放たれる。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : では……

[メイン3] 皐月夜見 : 当た、れ………!!

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 詰み、ガリィの全機能を持ってしても、この一撃は避けられない

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : だから

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン :  

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 自分を中心に、全方位に向かい氷波を放射した

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 差がないのなら押し返す
自分に届く刃と相手を氷結させる為、殺意を込めた寒波が両者諸共に凍り付かせる

[メイン3] 皐月夜見 : ………なっ……!?

[メイン3] 皐月夜見 : 勢いを宿した突きが、冷気に宛がわれ。

[メイン3] 皐月夜見 : ピキ、ピキキキ……と。

[メイン3] 皐月夜見 : 「これ、は………」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……要するに自爆なんですけどね」
「認めてあげますよ、皐月夜見」

[メイン3] 皐月夜見 : 全身が、凍り始める。

[メイン3] 皐月夜見 : 「……………」

[メイン3] 皐月夜見 : 「………みと、め……」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「アンタは、あたしが捨て身にならないと到底勝てない相手──だったよ」

[メイン3] 皐月夜見 : ………最期の、最期で。

[メイン3] 皐月夜見 : 私は──────────。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : これにて終焉、ガリィは内側から氷結しながらも微かに安堵した

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……繰り返す、安堵した

[メイン3] 皐月夜見 : ─────ああ、やっぱり、この世界から、離れたくな─────。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : この一瞬、確かにガリィは

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 敵から意識を逸らし、己がある事を、稼働している確かめている

[メイン3] 皐月夜見 : カラン、と
御刀が落ちる。

[メイン3] 皐月夜見 : ………………申し訳ございません。

[メイン3] 皐月夜見 : さやかさん、デンジさん。

[メイン3] 皐月夜見 : 私は─────ここ、ま、で──────────。

[メイン3] 皐月夜見 : 交差点に広がる冷たい氷景色。

[メイン3] 皐月夜見 : 文字通り、皐月夜見は……
"動かぬ人形"と、成り果てた。

[メイン3] 皐月夜見 : そして、ぽつぽつと、その彫刻人形から、光の粒が
天へと、昇っていく。

[メイン3] 皐月夜見 :  

[メイン3] 皐月夜見 : 【皐月夜見@刀使ノ巫女:死亡】

[メイン3] 皐月夜見 :  

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「まあ、そうだよな」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「凍りついたなら動けない」
「奥の手がないのなら、妥当極まる結果」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「………何、警戒してたんだろ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 凍りつくまでの一瞬、安堵していた瞬間ですら何故かガリィは不安に駆られていた

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……眼前の彫刻は、友のためなら凍波程度は乗り越えると

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : そんな確信のない不安は、当然の如く破られた

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : そう感じさせる何かがあった

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……けど、杞憂でしたね」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……っと」
よろめき、姿勢が崩れる

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……やっぱり、響きますか」
「こんな無茶するのは初めてですよ、ほんと」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 全身からの氷波の代償は、全身の軋む音が証明する通りの消耗だ

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「流石に…修理が必要です、ね」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ふらふらと歩みながら、その場を立ち去ろうとする

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 足跡を辿る。

[メイン3] 美樹さやか : 回復しきっていない足は、道半ばでこけさせる。

[メイン3] 美樹さやか : 剣を支えに、立ち上がる。

[メイン3] 美樹さやか : また、歩く。

[メイン3] 美樹さやか : そして、転ぶ。

[メイン3] 美樹さやか : 途方のない繰り返し。
つまらない単調な楽譜。

[メイン3] 美樹さやか : その歩きは、何度も何度も繰り返し。

[メイン3] 美樹さやか : 氷漬けにされた、交差点を目にする。

[メイン3] 美樹さやか : …これは、ガリィとか言う奴の……

[メイン3] 美樹さやか : …………まさ、か

[メイン3] 美樹さやか : 「あいつ、一人で抜け出して……!」

[メイン3] 美樹さやか : 足が、止まらない。

[メイン3] 美樹さやか : それを確かめるために、足が………

[メイン3] 美樹さやか : その答えは、すぐに出た。

[メイン3] 美樹さやか : 交差点に突き刺さった、一本の刀。

[メイン3] 美樹さやか : 「────────」

[メイン3] 美樹さやか : その刀は、凛々しく、”最期”まで健闘したという事を示すかのように。
突き刺さっていた。

[メイン3] 美樹さやか : けど

[メイン3] 美樹さやか : そんなの

[メイン3] 美樹さやか : どうでもいい

[メイン3] 美樹さやか : 「………」

[メイン3] 美樹さやか : ゆっくりと ゆっくりと

[メイン3] 美樹さやか : かたなに ちかづいて

[メイン3] 美樹さやか : 「……………よ、み」

[メイン3] 美樹さやか : つぶやいて それを てにとる

[メイン3] 美樹さやか : ずるり と

[メイン3] 美樹さやか : ぬけることなく 

[メイン3] 美樹さやか : ただ よりかかって

[メイン3] 美樹さやか : 「っ、ぁ」

[メイン3] 美樹さやか : 「あ、ああああああああぁあああぁぁ」

[メイン3] 美樹さやか : くちから はきだされていく なにか

[メイン3] 美樹さやか : むねが いたい 

[メイン3] 美樹さやか : からだじゅうが やけつほどに 

[メイン3] 美樹さやか : いたい

[メイン3] 美樹さやか : 「………ぅ、ぁ、ああああああ!!!!!」

[メイン3] 美樹さやか : 「なんで、っ、あいつがっ」

[メイン3] 美樹さやか : 「おわらなきゃ、ならないんだ」

[メイン3] 美樹さやか : 「あたしが、もっと、もっと、やってればっ」

[メイン3] 美樹さやか : 「っ、ああああぁああ!!」

[メイン3] 美樹さやか : 美樹さやかは、刀に寄りかかる様に。
泣きじゃくるような姿で、ただ重しを刀へと乗せて。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 美樹さやかは数刻わめいた後、ゆらりと立った。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 美樹さやかは刀をその場から抜き、ただ胡乱に歩き出した。

[メイン3] 美樹さやか : その時の美樹さやかの瞳は、ただただ。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 虚ろな目、だった。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : そうして、氷漬けされてった町を、歩く。

[メイン3] 美樹さやか : 解ける事のない凍り付いた町は、崩れることのなく。

[メイン3] 美樹さやか : ただただ、冷え切っていた。

[メイン3] 美樹さやか : 青空が広がりかけていた空は、暗雲たちこめ。

[メイン3] 美樹さやか : 地には影が。

[メイン3] 美樹さやか : そして、”すっかり治った脚”で。

[メイン3] 美樹さやか : さやかの足元に、魔法陣が展開され。
そこに突き刺さる、何本の剣。

[メイン3] 美樹さやか : それを躊躇なく、投げつける。

[メイン3] 美樹さやか : 「………外した」

[メイン3] 美樹さやか : その剣の行き先は────

[メイン3] 美樹さやか : 凍り付いた人形。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……はぁ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 氷の棺に深く剣が突き刺さり、目を閉じて眠るガリィの前に止まる

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……マナーって物がないんですか?」
ゆっくりと目を開ける

[メイン3] 美樹さやか : 「…もっと深く、差し込んでおけばよかった」

[メイン3] 美樹さやか : 踏み込み。

[メイン3] 美樹さやか : 魔法陣が展開され。
それを土台として。

[メイン3] 美樹さやか : 飛ぶ。

[メイン3] 美樹さやか : ────寸前、一気にガリィの目の前まで近寄る。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 対抗するように棺の背後に大型の錬成陣が世界へと塗りたくられるように配置され──

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 氷の棺を、広げるように爆発させた

[メイン3] 美樹さやか : 「あんたなんか……くたばっちまえ!!!ガァリィイイイイ!!!」

[メイン3] 美樹さやか : 「………ッ」

[メイン3] 美樹さやか : その爆発に。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「頭冷やしなよ、さやか、だっけ?」

[メイン3] 美樹さやか : ”臆すことなく”突っ込む。

[メイン3] 美樹さやか : 崩れる体は、淀んだ魔法陣によって修復されていく。

[メイン3] 美樹さやか : 「…夜見を殺したのは…ッ、あんただろ!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「どう動いても治るってか……あ、そうですよ?」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : あっけらかんと正直に答える

[メイン3] 美樹さやか : 「ふッざけるなぁああああああ!!!!」

[メイン3] 美樹さやか : そのまま、夜見の刀で虚ろな人形に斬りつけようとする。

[メイン3] 美樹さやか : 刀筋などごっちゃで、ただ振り回すほどの勢いで。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 棺の爆散により散らばった氷と水を再操作
今度は崩さないように

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 閉じるようにして、狂気の突進を遮断する

[メイン3] 美樹さやか : 「がッ……!!!」

[メイン3] 美樹さやか : 再構成された棺により、その一閃が止まる。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「治るだけなんなんでしょう?」
「なら、しばらく凍っててくださいよっと」
そのまま冷気を集中させ、棺ごと冷凍しようとする

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ひび割れるような歪な音を立てながら、コールドスリープの歪な再現は実演されていく

[メイン3] 美樹さやか : 「ッ、邪魔あああァァ!!!!」

[メイン3] 美樹さやか : 冷える体、凍えていくその身。
けれど動きは止まることのない。

[メイン3] 美樹さやか : ……魔法少女、もはや”人間”ではない化け物。

[メイン3] 美樹さやか : 本体である魂の器。
ソウルジェム……輝きの放つソレが崩れるまで、永遠に熱を放ち続ける存在。

[メイン3] 美樹さやか : その棺を、冷気を……

[メイン3] 美樹さやか : 手に持つあの刀で。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : ”切り裂く”

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 「…ああッ!!!」

[メイン3] 美樹さやか : ブォン、と空を切る音。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……はぁ、滅茶苦茶ですね」
「空気を力任せに引き裂くとか、ドン引きですよ」後方へとスケートのように滑走しながらガリィは呟く

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : あの剛剣を喰らえば、自分の体は文字通り砕けて散るだろう
そう確信するだけの威力があった

[メイン3] 美樹さやか : 「逃がさない……!!絶対に、ここで仕留めてやるッ……!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : が、ガリィは氷のような視線を向けるまま
淡々と次の手を実行した

[メイン3] 美樹さやか : 滑りゆく彼女を、捉え。
魔法陣を生み出し、また踏み込もうとする。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「じゃ、次はもっと…細かくしましょうか」

[メイン3] 美樹さやか : そしてまた、一直線に飛び込もうとする。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 氷塊を幾らか束ねてを呼び出し、高速回転
そのまま互いを削り合わせる

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 高密度の氷は霞のように広がって、街をあっさりと覆い尽くす

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「じゃ、どうぞ」
「少し頭冷やしなさいな」

[メイン3] 美樹さやか : 「……!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : その冷気を操作した
絶対零度の温度のままに、魔法少女へと町中の氷霞が殺到する

[メイン3] 美樹さやか : その速度は、落ちることが無く。

[メイン3] 美樹さやか : ”プレスト”

[メイン3] 美樹さやか : その速度で突っ込むのは、罠に自ら掛かりに行くことと同義。

[メイン3] 美樹さやか : だが、止めることはなく。

[メイン3] 美樹さやか : 「ッ、ぐ、ァアアアあぁああ!!!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……まるでケダモノ」

[メイン3] 美樹さやか : 氷霰が、体の節々を削っていく。

[メイン3] 美樹さやか : 削っては治り、治っては削れ。

[メイン3] 美樹さやか : その氷人形の元にたどり着くころには。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : そのまま閉じるように大袈裟に腕を動かして、雪嵐のように冷波を収束させる
真っ白に染まる景色の中に、ガリィの姿は溶けて消える

[メイン3] 美樹さやか : 回復しきれなかった怪我が、さやかの体を赤に染め上げていた。

[メイン3] 美樹さやか : 「……きえ、た……」

[メイン3] 美樹さやか : 「……どこ、いったッ…」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」
パチン パチン

[メイン3] 美樹さやか : 視界が赤く染まり、得体のしれない痛みに耐えながらも、まるで猟犬のように食いつかんと。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 弾くような音が雪吹雪の彼方より響いてくる

[メイン3] 美樹さやか : 「……おちょくり、やがってぇえええ!!!」

[メイン3] 美樹さやか : ……霜付く体、冷えついた体。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : パチン、パチン、憤る声を馬鹿にしているように、弾ける音はそのままだ

[メイン3] 美樹さやか : 温度のない腕、血肉も只今はその感触はない。

[メイン3] 美樹さやか : マントを翻し。

[メイン3] 美樹さやか : 開き。
そこに生まれた数百もの剣を。

[メイン3] 美樹さやか : 「食らえぇええぇえ!!!」

[メイン3] 美樹さやか : 拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。拾い、投げ。

[メイン3] 美樹さやか : 視界の見えぬ吹雪の中に、何本も投擲する。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : パチン、パチン
金属が硬い何かに当たる音はする、それでもラップ音は健在のまま

[メイン3] 美樹さやか : 「く………」

[メイン3] 美樹さやか : 武器が消えゆくそれは、まるで自然に抗う人間のようで。

[メイン3]    : 次第に吹雪の向こうに影が映る

[メイン3] 美樹さやか : 「………あ?」

[メイン3]    : その周りには剣が幾つも突き刺さっていて、身動きが取れないようにも見える

[メイン3] 美樹さやか : 「……なに、あれ」

[メイン3] 美樹さやか : ちらりと、その目に映った、”彼女”。

[メイン3]    : 吹雪は以前色濃いままに、影を虚に映すだけ

[メイン3]    : 真っ白な吹雪に不似合いな程映し出される黒い影は、確かに見覚えのある形だろう

[メイン3] 美樹さやか : 「……まさ、か…」

[メイン3] 美樹さやか : 見覚えのある、彼女は。
見間違えるはずのない。

[メイン3] 美樹さやか : 「……よ、み」

[メイン3]    :  

[メイン3]   :  

[メイン3]   : 正解、ではご褒美に吹雪を少し解いてあげましょう

[メイン3]   : 白い霧が開けてみれば、そこに現れる光景は絵に描いたような串刺しだ

[メイン3]   : あっけに取られた表情のまま、投擲された剣が突き刺さっている

[メイン3] 美樹さやか : 「────────」

[メイン3] 美樹さやか : それを見て。

[メイン3] 美樹さやか : 熱が籠っていた、美樹さやかは。

[メイン3] 美樹さやか : 逆に、”冷えついた”。

[メイン3] 美樹さやか : 「……ああ、そうかい」

[メイン3] 美樹さやか : 剣を持ち、その”影”へと投げつける。

[メイン3]    : 「あら、こういう演出はお嫌いでした?」

[メイン3] 美樹さやか : 「……生憎、悪趣味な演出は見慣れてるんでね!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「あら、それは残念……」
やっと白い霧が晴れ、否

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 周囲を覆う巨大な氷壁に吸収され、視界が明らかになっていく

[メイン3] 美樹さやか : 「…でもおあいにく様、体も頭も冷え込んだよ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ドームのように一帯を覆う氷の壁
その上部にガリィは立ち、内部のさやかを覗き込んでいる

[メイン3] 美樹さやか : 「どーりで、当たらなかったわけだ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「ええ、頭とか冷えました?」
「やったらめったら投げてるの、上から見てて面白かったですよ」

[メイン3] 美樹さやか : 突き刺さっていた残りの刀を、ドームの中心部へと投げつける。

[メイン3] 美樹さやか : 「そりゃいいご身分でッ…っと!」

[メイン3] 美樹さやか : そして、余りは……
変わらず、幻影のあったであろう場所へと。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 空を覆う氷の幕へ突き刺さった剣を起点に周囲にヒビが入っていく

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……乱暴ですねぇ」

[メイン3] 美樹さやか : 何度もアホみたいに投げつけた、なら。
少なからず、ヒビも入ってるだろうさ…!

[メイン3] 美樹さやか : 「でも、効くでしょ?」

[メイン3] 美樹さやか : にやりと笑いながら。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……ま、そうだけどさ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 氷でできた天蓋にトドメを刺すように上から踏みつければ

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : まるで砕けるガラスのように砕け、ガリィ諸共に落下する

[メイン3] 美樹さやか : 「……よーやくご対面だ、ガリィ…!」

[メイン3] 美樹さやか : 降ってくる彼女に向けて、”彼女”の愛刀を向ける。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「実は、あたしはガリィの従姉妹の……なーんて誤魔化しはしないであげますよ!!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「やっと頭が冷えたようだし、少しは相手してやります!」
「美樹さやか!」

[メイン3] 美樹さやか : 「来なよ……!!」
……たしか、こうやってたな。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 落ちる氷の天蓋の残骸へ再干渉、腕を氷を纏った大剣に変え、重力を味方につけて突貫する

[メイン3] 美樹さやか : ドームが割れ、悪天候もいつの間にか消え去り。

[メイン3] 美樹さやか : 一筋の光が、刀とさやかに。

[メイン3] 美樹さやか : その大剣をまともに……食らうのではなく。

[メイン3] 美樹さやか : 「やぁッ!」

[メイン3] 美樹さやか : ガギィン、と音が鳴る。

[メイン3] 美樹さやか : 刀を大きな氷の剣へとそわせ、力を分散させる。

[メイン3] 美樹さやか : 重力と共に落ち行くソレを、流さんと。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「チッ…!」
威力を流すように飛ばされ、挙句こちらに剣が迫る

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 以前とは違う様子の剣筋に驚嘆しつつ、対処の為に錬成陣を展開しようと、左手をかざす

[メイン3] 美樹さやか : 「今度こそ、向き合ってもらうよッ…!!」

[メイン3] 美樹さやか : 一歩。

[メイン3] 美樹さやか : 魔法陣を足元へと生み出し。
足場にして……

[メイン3] 美樹さやか : 加速、するッ!

[メイン3] 美樹さやか : 冷えついたその剣と、透き通る刀が激しくぶつかり合う音を立てながら。

[メイン3] 美樹さやか : 切っ先が、ガリィへと迫る。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「ッ──!?」
更に加速した敵へと対処が遅れ、最低限の氷膜を腕に纏う程度で干渉が止まる

[メイン3] 美樹さやか : 「これなら…どうだ!」

[メイン3] 美樹さやか : 一閃。

[メイン3] 美樹さやか : その腕を、斬りつける。

[メイン3] 美樹さやか : その構えは……夜見のしたソレと全く、同じだった。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「────」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 薄氷が抵抗を試みる間も無く切り開かれ
飛沫の如く細氷が空へ浮く

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 以前、さやかの投剣を受け止めせしめた腕
それが綺麗に分かたれた

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「………まさか、ここまでやるとは」

[メイン3] 美樹さやか : パキン、と割れる音が、刀と共に奏でた。

[メイン3] 美樹さやか : 「…もう…前までのあたしじゃ、ないんでね…!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 痛みはない、擬似痛覚はあまりの剣閃の鋭さに斬られたことをバグとさえ認識しているのだろう

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「…みたい、ですね」

[メイン3] 美樹さやか : その刀が奏でる輝きは、まさしく。

[メイン3] 美樹さやか : 氷をも溶かす、熱の塊だった。

[メイン3] 美樹さやか : 空中で浮いた、その体は。

[メイン3] 美樹さやか : そのまま落ち行くかに見えた。
が。

[メイン3] 美樹さやか : 「…使わせてもらうよ」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……」
ガリィの戦闘回路は加速を重ね、不利すぎる現状への解決策を並べて弾く

[メイン3] 美樹さやか : 氷の塊、鋭かったソレを踏みつける。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ドームのように作った氷壁の影響で、離脱はほぼ不可能だ
そして、制空権は敵にある

[メイン3] 美樹さやか : 刃は足に食い込む。

[メイン3] 美樹さやか : が、それを治す暇も、魔力もない。

[メイン3] 美樹さやか : 「どこ見てんの、こっち見て……たんまりと、食らえ!」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 凍波の放射も、負担はすでに限界だ

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ……夜見さえいなければ、ここからでも氷漬けにするのは不可能ではなかったが
出し惜しめば破壊されていた以上、望むべくもない過程だろう

[メイン3] 美樹さやか : その勢いで、凍り付いた人形へと……

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 一閃。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「………」

[メイン3] 美樹さやか : ……胴体へと、今度こそ。

[メイン3] 美樹さやか : 切りつけた。

[メイン3] 美樹さやか : 氷が生み出した影は。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 歯車の音だけが、しばし響く

[メイン3] 美樹さやか : 一瞬の閃光へと。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 狂いなく刻み続ける音は、未だ止まらない

[メイン3] 美樹さやか : 「………」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 切断された表面が、崩れ落ちる時までは
鋭い一撃だからこそ、しばしの猶予が残される

[メイン3] 美樹さやか : その歯車の音を聞きながら。

[メイン3] 美樹さやか : それを止める事は、”しなかった”。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「…はぁ、獲物に選んだつもりでしたが」
「少し見込みが甘かったですね」

[メイン3] 美樹さやか : ゆっくりと落ち行く体。

[メイン3] 美樹さやか : 「……そんなことないよ、アンタも…万全なら、きっと負けてた」

[メイン3] 美樹さやか : ……万全ではなくしたのは、間違いなく……

[メイン3] 美樹さやか : …………。

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「……マスター」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 「ガリィは、ここまででした」

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : 己の役割を果たせぬ事を、計画の始まりさえ見届けぬ不忠を詫びながら

[メイン3] ガリィ・トゥーマーン : ガリィの上半身は崩れ落ちた

[メイン3] 美樹さやか : 「…………」

[メイン3] 美樹さやか : 人形、か。

[メイン3] 美樹さやか : …それを動かす、誰かのために尽くそうと………

[メイン3] 美樹さやか : …まるで、昔のあたしみたいだな。

[メイン3] 美樹さやか : その上半身を、なぜだかわからないが。
自分でも抱き留めて。

[メイン3] 美樹さやか : そのまま、落ちていった。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか : 「げふっ」

[メイン3] 美樹さやか : そのまま、地面にたたきつけられる。

[メイン3] 美樹さやか : 「あ、ったぁ~……」

[メイン3] 美樹さやか : 背中からモロに落とされ、痛みが体を迸る。
鈍くなってしまったとはいえ、かなり効く。

[メイン3]    : 地面へと落ちた瞬間、主を失い
統制を無くした氷のドームも崩れて消える

[メイン3]    : バラバラになって散る硝子のような氷細工
光を反射して、いくたびの光彩を生み出しながら地面に向かい砕けて散る

[メイン3] 美樹さやか : 「……っはぁ~…」

[メイン3] 美樹さやか : 横目で崩れゆく氷を見ていく。

[メイン3] 美樹さやか : 太陽の光が、差し込み、照らされて溶けていく。

[メイン3] 美樹さやか : ……強敵だった、魔力のほとんどを使ってしまったわけだし。

[メイン3] 美樹さやか : 黒くにじんだ、魂の器は。
もはや真っ黒になっていた。

[メイン3] 美樹さやか : …これであたしも、”魔女”の仲間入りか。

[メイン3] 美樹さやか : ああ、でも……そうだな。

[メイン3] 美樹さやか : ………まだ、死ねない。

[メイン3] 美樹さやか : 夜見……刀で戦うものなら命と呼べるであろうそれ。

[メイン3] 美樹さやか : その刀を、支えにして。
立ち上がる。

[メイン3] 美樹さやか : 「まだ、くたばれないもんね」

[メイン3] 美樹さやか : 「夜見、デンジ」

[メイン3] 美樹さやか : ────魔法少女は、希望を祈りそれを抱いて戦う者たち。

[メイン3] 美樹さやか : 故に。

[メイン3] 美樹さやか : 絶望するまで、心は冷えることなく、ただ熱を持って。

[メイン3] 美樹さやか : 希望を叶える、存在なのだ。

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :  

[メイン3] 美樹さやか :